2012年8月29日水曜日

ミリバルの改造と内部構造の考察

菊水 MODEL 164 VTVM をベースに近代化


物を捨てられない症候群の 無銭庵 仙人と申します。骨董品の測定器を改修して道楽を続けています。真空管オーディオを工作・特性の把握には基準となる測定器が必要となります。真空管全盛時代に測定器として製造された 菊水 MODEL164 VTVM を改造して現代風のACミリボルトメーターを作成しました。道楽の一環であり 過去から経験、記憶を元に記述しています。誤解釈・誤記憶により記載間違い等が多々あると思いますが ご勘弁ください。多少とも参考となればと思い記載しました。簡単な動作原理など ご理解いただければ幸いです。一般凡人による営利を目的としない道楽での改修作業内容記述の忘備録です。   m(__ __)m

アナログのミリバルは現在新品を購入する場合 4~5万円で購入可能な測定器です。2針2chのミリバルでは8万円前後で入手は可能です。市販品ミリバルの精度はメーカーのスペックでは ±2%~3%程度の測定誤差があります。ほぼ回路計(テスター)同等精度と思います。

改修した 菊水 MODEL 164 VTVM  ミリバル



今回 近代化を図ったACミリボルトメーターは50年近く昔に製造された 真空管式ミリバルです。測定器本体には品番と VTVM (Vacuum Tube Volt Meters) 真空管電圧計の表示があります。メーター表示は 600Ω 1mW時 の電圧値(0.775V) 0dBm を表示してあります。現在であれば 1V 0dB と二重表示をされた測定器ですが この測定器は一種類のメーター表示となっています。本体内のネジは旧JISネジを使用しています。日本国内では1965年から順次 ISOネジ に変わっていますので製造時期が判明します。

道楽である真空管式オーディオシステムの工作・修復には欠かせない測定器です。三種の神器の中に入る測定器です。現在は半導体を使ったACミリボルトメーターを複数台所有して活用していますが 以前から所有しています真空管式ミリバルは誤差が多く 長い間蔵入りをしていました。今回内部構造の把握をかねて近代化をしましたので記述いたします。

ACミリボルトメーターとは

正弦波の小さな電圧を測定するために作成された交流電圧計です。通常の交流電圧を測定するには 回路計・マルチメーター(テスター)などを使って測定しますが 最低測定電圧は機種により 最少測定電圧は 数Vから10V程度となっています。オーディオ機器内の小さな交流電圧は回路計(テスター)では測定することができません。また測定器を接続すると測定器の内部抵抗により測定電圧誤差が発生します。高級なアナログ回路計 YEW3201 型でも交流電圧測定時の内部抵抗値は 10KΩ/V のスペックです。回路計は直流電圧測定時には内部抵抗値は 100KΩ/V です。回路インピーダンスの高い箇所の測定において 交流電圧測定時iには計器内部抵抗値を無視することができません。
以上の理由により交流電圧計の各レンジにおいて 入力インピーダンスを1MΩ程度とするため 小さな交流信号を真空管又は半導体素子を用いて増幅し 増幅された信号を直流電圧に変換後直流電流計を振らせる測定器が ACミリボルトメーター(ミリバル)です。この測定器は正弦波電圧を測定するためであり 波形の崩れた測定時には誤差が大きくなります。

真空管電圧計バルボルのメーター表示

同じ時代にVTVM・真空管電圧計(バルボル)がありました。回路計(テスター)と同じ用途で入力インピーダンスが高い測定器です。初期のバルボルでは交流電圧測定時には測定プローブを使いプローブ内に検波用の真空管が内蔵されていました。メーターの表示方法もミリバルとは違っており 交流電圧については実効値以外に正弦波は最大値、P-P値が表示されています。抵抗値、交流電圧、直流電圧が測定できる入力インピーダンスが高い測定器です。しかし小さな交流電圧は測定できません。バルボルとミリバルの違いがあり測定する用途も違っています。アナログ回路計(テスター)との大きな違いは抵抗値測定表示目盛が回路計とは0Ω表示位置が逆になっています。

改修に使用したミリバルの仕様としては各レンジ入力抵抗値は 1MΩであると判明します。現在販売されているミリバルは 入力回路に FET (電界効果トランジスターField effect transistor )又は FET入力ICで構成されており 入力抵抗値が 10MΩ の機器も存在します。又入力感度も良くなっています。その結果高電圧の測定はできません。AC100V止まりです。

ミリバルとは交流電圧が主な測定となりますが オーディオでは減衰、増幅などの表示がボルト単位ではなく dB 表示で 掛け算、割り算が 簡単な 足し算、引き算で計算することができます。そのために 各レンジのステップは 10dB 単位ごとの変化量と設計されています。
表示する単位 dB(デシベルのデシは1/10を表す補助単位) はベルが発明した有線電話設備の 0dBm 600Ω 1mW の単位を基本として当初より使われています。

:計算式で表しますと オームの法則により
W=I・E より式を変形しますと W=E・E/R  数値を代入すると 0.001(W)=E・E/600(Ω)    E=√0.001(W)・600(Ω)    E=0.774596(V)  となり 0dBm の電圧値になります。


無線(RF)設備において 特性・感度・アンテナ利得 なども基準値は違いますが dB で性能を表します。オーディオ(AF)で扱われる 0dB  0.775V が電圧で表示された場合の電圧値です。これを表記した場合は **dBm と表示します。基準電圧を 0dB 0.775V を基準とした表示です。近年のオーディオ機器の場合 表示方法の中では 0dB が 1V の基準単位も使われており  **dB の表示がされている場合は 1v 0dB を表します。基本電圧が違いますので注意が必要です。基本単位を確認しなければなりません。相対比を表して性能を表記している場合もあります。
記述により 1V 0dB は 0dBv と記載される場合もあります。

表示される電圧は 交流信号 の 正弦波 実効値 を表します。



余談 ! ! !

高周波関連のdB表示の基準値として SSG などでは ** dBm  と  ** dBμ の表示をします。
** dBm の表示では 50Ω 1mW  が 0dBm の表示をします。オーディオと違い負荷インピーダンスは 50Ωとなります。使用用途は無線送信機などの特性を表示します。電圧に換算すると W=I・E より変形代入すると 0.001(W)=E×E/50(Ω) から :計算すると E=√0.001×50=0.2236(V) と計算できます。 高周波では 0dBm は 0.2236V となります。オーディオとは数値が異なります。
** dBμ の表示では 基準電圧が 1μV を 0dBμ と表示します。受信機のように電圧増幅回路で よく使用されており 負荷インピーダンスは明記されていません。

菊水 MODEL 164 内部構造

菊水 MODEL 164 プリント配線基板

左図はミリバルの内部プリント基板です。
使用されています真空管の本数は6本使用されています。

入力端子と初段真空管グリッとの間に1/1000 の減衰抵抗がありロータリースイッチでスルーか減衰を切り替えています。

初段
6AU6 通則用 三極管接続 カソードホロワ回路で 増幅度が1以下のインピーダンス変換回路です。三極管接続としては G2,G3をプレートに接続した三極管接続です。

各レンジに対応した ATT 10KΩ 分圧抵抗器

2段目
12AX7 通則用 三極管2段増幅回路 NFBがかけられています。

3段目
6AU6 通則用 五極管接続でカソードにはメーター感度調整のNFB回路で巻線VR 33Ωがあります。3段目の真空管と最終段の真空管回路でNFBが形成されています。

最終段
6BL8/6U8 通則用 五極管で増幅、三極管がカソードホロワ回路で インピーダンス変換後メーター回路へ送出されゲルマニュームダイオードで全波整流後 直流電流計を駆動します。帰路回路は3段目 6AU6 カソード回路を通じてグランドに接地されます。

電源回路
6X4 VR150MT  電源トランスの230V端子から 整流管 6X4 て゜全波整流されます。その後フィルター回路を経て 定電圧放電管 VR150MT で安定した直流電圧が各真空管の動作電源となり各所に供給されます。

測定レンジ


入力感度切り替えロータリースイッチ


納品当初の取扱説明書がないため詳細なスペックは不明ですが 内部回路を解析しますと ローターリースイッチにより電流計メーター板の目盛表示から 交流電圧計としては フルスケール目盛りが 50/rms,15/rms となっています。dBm 目盛表示は -20dBから+6dB まで各レンジとも共通となっています。感度選択つまみにの表示板には 最小電圧測定レンジ表示は 1.5mV/-60dB となっており 測定できる一番低い交流電圧は 1.5mV/fs フルスケール表示となりますで 1.5mVが測定できます。測定単位が10dBステップとなっており 一番高電圧測定ポジションは 500V/fs 50dB です。

10KΩ合成抵抗の分圧抵抗

各レンジ間は10dBステップとなっており 初段の真空管と2段目の真空管の間に ATT 合成抵抗値が10KΩの分圧器の精密抵抗です。各レンジの分圧を制御します。

分圧抵抗は直列接続となっており抵抗が6本使用されています。
抵抗値は接地側から31.6Ω・68.4Ω・216Ω・684Ω・2160Ω・6800Ω の精密抵抗が直列接続されており これらの抵抗の合成抵抗値は9960Ωとなります。約10KΩのアッテネーターです。ホット側よりタップがロータリースイッチにより選択されます。6800Ωが6840Ωであればちょうど合成抵抗値は10KΩとなります。

1.5mVレンジ(-60dB)測定時には10KΩの負荷として働きスルーで次段に送出されます。

5mVレンジ(-50dB)では6800Ωと3160Ωの合成抵抗と分圧され(3160/10000=0.316)次段に送出します。

15mVレンジ(-40dB)では8960Ω合成抵抗と1000Ωの合成抵抗で分圧された(1000/10000=0.1)信号が次段に送出します。

50mVレンジ(-30dB)では9644Ωの合成抵抗と316Ωの合成抵抗で分圧された(316/10000=0.0316)信号が次段に送出します。

150mVレンジ(-20dB)では9860Ωの合成抵抗と100Ωの合成抵抗で分圧された(100/10000=0.01)信号が次段に送出します。

500mVレンジ(-10dB)では9928.4Ωの合成抵抗と31.64Ωの抵抗で分圧された(31.64/10000=0.00316)信号が次段に送出します。

999KΩ と1KΩ の分圧抵抗

1.5Vレンジ(0dB)からは入力回路にあります分圧抵抗により 1.5Vレンジから500Vレンジまでロータリースイッチにより抵抗器で入力信号を減衰させます。1/1000に減衰された信号は初段の真空管グリッドに接続されます。抵抗の値は 999KΩと1KΩ で分圧されます。入力抵抗値は1MΩで動作します。1.5mVから500mVレンジでは分圧されず入力抵抗1MΩとして働きスルーで初段のグリッドに接続されています。
減衰により1.5Vは1.5mVの信号として働きます。初段と2段目の間にありました10KΩのATTで測定電圧を選択します。入力された電圧が異なりますが処理される電圧は同じとなります。

1.5Vレンジ(0dB) 入力回路 1/1000 で ATTのレンジは1.5mVと同様となります。

5Vレンジ(10dB) 入力回路 1/1000 で ATTのレンジは5mVと同様となります。

15Vレンジ(20dB) 入力回路 1/1000 で ATTのレンジは15mVと同様となります。

50Vレンジ(30dB) 入力回路 1/1000 で ATTのレンジは50mVと同様となります。

150Vレンジ(40dB) 入力回路 1/1000 で ATTのレンジは150mVと同様となります。

500Vレンジ(50dB) 入力回路 1/1000 で ATTのレンジは500mVと同様となります。

以上が各測定レンジにおける回路内での電圧配分処理内容です。

現実には1.5mVと1.58mV の信号に変換されます。1.5mVのメーター目盛は 15/fs であり 5.0mVは メーター目盛で 50/fs 目盛を使い測定結果を得ますが フルスケール表示位置が同一ではありません。50/fs の位置がちょうど15.8 目盛位置と重なります。しかし目盛は15までしか表示されていません。

現有品のミリバルの表示を見ますと 最小測定電圧で 1mV/fs のミリバルでは メーター目盛が 10/fs と3/fs仕様です。10dBステップですから3mVレンジは計算すると 3.16目盛がフルスケールになります。このような表示で目盛は表示されています。10目盛と3.16目盛の位置が丁度重なっています。

メーター表示


ここで小生苦手な電気数学の話となります。ご辛抱ください。誤解釈が記載されているかも知れません。

上記の分圧比率をよく見ると 一定の倍数になっているのが解ります。常用対数と呼ばれることも解ると思います。詳しくは電気数学・電気物理学の教科書をご覧ください。
ミリバルは各レンジが10dB ステップで切り替わる構造です。電圧比ですから 10倍=20dB  1/10倍=-20dB  となっています。電圧・電流は  20log10 でした。  電力は 10log10  で表せました。
ミリバルは電圧比ですから

G(gain)=20log10(Vout/Vin)   G=dB となります。(電圧比の常用対数に20を乗じた値)  にあてはめると

   0dB は    1倍 
+10dB は 3.162倍  -10dB は 0.3162
+20dB は 10.00倍  -20dB は 0.1000倍  
+30dB は 31.62倍  -30dB は 0.0316
+40dB は 100.0倍  -40dB は 0.0100
+50dB は 316.2倍  -50dB は 0.0032
+60dB は 1000.倍  -60dB は 0.0010倍      (通常+の表示はしません +は利得 -は減衰)

ここで下記記載したメーター目盛りを観察してください。フルスケール目盛りの位置が 10 の位置の時には下側目盛りは 3.16 になっていると思います。冒頭に記載しましたデシベル表に倍率が記載してあります。ボルト表示ですので G(gain)=20log10(Vout/Vin)   G=dB になりますので10dBステップのアッテネーターでであれば下図の画像になるわけです。そこで 1V 0dB と 0.775V 0dB の2種類が赤字で目盛られています。1V 0dB 目盛りであれば -10dB の位置での電圧は 0.316V になります。-20dB の位置は丁度 0.1V になります。デシベル表と同じ数値が目盛られています。オーディオ装置ではほとんどの場合 0.775V 0dB を基準として使用しますので 1V 0dB とは 約2dB 差が発生します。電圧目盛りは均等に目盛られていますが デシベル表示は対数表示ですので目盛りは均等ではありません。

VT-106S ミリバル 目盛表示板

上記の結果から分圧抵抗の数字が同じ比率であることが解ります。このことからdB表示は計算でボルト表示に変換することができます。ミリバルにはボルト表示部とdB表示部があります。計算をしなくても一番の近道は書籍などの巻末に記載されている常用対数表で数字を見つけ出すのが簡単です。

今回ミリバルの増幅素子を真空管から 現在の測定機器で採用されています オペアンプICを使って同等の回路動作となるように設計します。
測定レンジのATTに使用されていました精密抵抗およびロータリースイッチは現有品を利用しての改修作業とします。

上記内部構造であることが判明しました。測定する電圧が各ファンクション 1.5mV/fs の信号に調整された後 メーター駆動電圧まで増幅します。その後ダイオードを使い全パ整流後 電流計で測定値を表示する仕組みとなっています。実際の真空管回路では真空管式プリアンプと同様にヒーターハムによるSN比を改善するために一部真空管のヒーターは直流点火されています。なおかつ測定器であるた長期間使用での測定誤差を抑えるため 電源電圧変動による測定誤差を少なくするための 定電圧放電管 VR150MT を使用して回路電圧を DC150V で安定化を図っています。

バラック回路による回路動作実験

バラックで組み立て実験中

汎用オペアンプを使用した増幅回路で実験をしてから ミリバル計に実装する予定で数種類の回路を組み立てて実働実験をバラックで行いました。基準正弦波波形のCR発振オーディオジェネレーターと複数台のミリバルを使用しての試行錯誤作業です。


今回蛇の目基板を使ったオペアンプ増幅回路を設計しました。
±12V 電源回路
基板の作成方法、回路図については ICを使ったステレオアンプの工作のブログに掲載内容と類似しています。ブログには詳細を記載してありますので参照願います。回路としてはステレオアンプのプリアンプ動作状況に類似しています。

musenan02.blogspot.com を参照

使用しますオペアンプICは汎用性の多い安価な国産セカンドソースのオペアンプを使って設計しました。薬と同じようにジェネリックの品物ですが日本製は本家より安定した動作になります。IC本家の TL072  RC4558 などでも問題なく動作します。


NJM072D j-FET入力ポートであり 入力インピーダンスが真空管並み高いデュアルオペアンプです。(入力抵抗 Rin 数100MΩ以上) このデバイスは現在でも大量に生産されており1個50円程度で入手が可能です。

電流計ドライブ全波整流回路 1N60×2
 トランジスター入力回路となりますが NJM4558DD ローノイズ選別品も使用した回路実験も実施しました。
NJM4558DDは1個25円程度で入手できました。電源回路についてはICを使ったステレオアンプ工作のブログを参照してください。プリアンプNF型トーン回路に使用しています電源部が ±12V~15Vの電源を使用します。
オペアンプ単体の増幅度は負帰還がない場合 ICメーカーのスペックを確認すると NJM4558DDで100dBの利得があります。現実には負帰還を施して利得を下げ ひずみ率の低下を狙います。同じく NJM072D も裸利得が100dB以上あります。オペアンプは出力端子と-入力端子を接続すると 簡単にインピーダンス変換回路ができます。 ICホロワ回路です。


ホロワ回路とは 増幅度が1以下であり 入力インピーダンスが高く 出力インピーダンスが低い 真空管回路のカソードホロワと同じような働きの回路です。トランジスター回路ではエミッターホロワ FET回路ではソースホロワ と呼ばれます。この原理を利用しますと NJM4558DDのトランジスター入力オペアンプでも十二分に実用となります。入力抵抗は標準値5MΩの値です。10KΩのATT以降の増幅回路インピーダンスが低く トランジスター入力回路のオペアンプでも問題はありません。
これらのICスペックから各回路における増幅度および歪率を考慮して回路設計をします。特性としては可聴周波数領域でフラットな特性とし 100KHz以上の高域については殆んど使用することがなく ミリバルとしてはオーディオ帯域を測定することとして話を進めます。
疑似ATT回路での実験

表示板である直流電流計をフルスケールで動作するにはどれほどの交流電圧が必要かをまず実験します。最小測定電圧レンジで 1.5mVが入力された場合電流計フルスケール動作までにどれくらいの交流電圧が必要かを検証しました。直流電流計はYEW製で 200μA/fs が使用されています。

実験の結果 直流電流計がメーターフルスケールに必要な交流電圧は 2.7V/rms が必要と判明しました。(測定は1000Hz正弦波を使用)
 
今回使用しますオペアンプICについて考察しますと

オペアンプ動作電圧が±12Vで動作する環境から オペアンプで出力できる最大交流電圧を考察します。理論上最大24V/p-pまでの波形を歪なしで増幅することができます。この値を実効値に計算しますと 

24V/2=12V  12V=E×√2  E=12V/1.41=8.51V

8.51V/rms が オペアンプで増幅できる最大出力電圧と判明します。実際のIC増幅回路では 最大出力付近では歪が多くなり現実としては 7V/rms 前後が実用範囲であると推察できます。
今回のミリバルでは 2.7V/rms がメーターフルスケールに必要な電圧ですので オペアンプでは7V/rms程度まで歪が少なく増幅できますので問題は無いと思います。

上記実験の結果から

MM型レコードプレーヤーのイコライザー・プリアンプ出力 メインアンプ入力電圧に類似しています。5mVのカートリッジ出力が メインアンプ駆動電圧1Vとすると ステレオのプリアンプそっくりであるの事が判明します。今回はレコードのEQ回路と違いフラットな増幅回路で設計すれば良いと思います。

単純に利得を表記すると 1.5mVから1.5Vに増幅することですから60dBです。余裕を甘味して 増幅する利得は 60dB~70dB 必要なことが判明します。オペアンプ単体では増幅度は100dBほどありますが 今回はNFBを施して各オペアンプの利得を40dB~50dBに設定した場合は歪の少ない動作領域とすることができます。ゲインオーバー分は利得調整用の半固定VRでゲイン調整すれば良しとなります。余裕を甘味して トータル利得を80dB~90dB程度で設計すれば間違いなく動作が可能となります。真空管回路では増幅用の真空管は4本使用して動作していました。 デュアルオペアンプでは最低2個あれば同等の回路構成となることが実験より判明しました。

増幅回路の利得配分

真空管式の入力回路を今回そのまま使用するとしていますが 真空管と半導体での歪を少なく大きい電圧を増幅するには半導体回路は電源電圧が低いため真空管回路より不利となります。
特に初段増幅回路は入力端子より入力される電圧は 0Vから500mVがスルーでインピーダンス変換回路に入ります。マージンを5倍として考察すると 2.5V/rms の入力波形が歪を発生しないインピーダンス変換回路が必要と考察できます。ICホロワ 半導体回路であっても増幅度1以下ですので実験の結果 数Vの信号では歪ません。実回路ではインピーダンス変換回路の後に測定レンジ切り替用の 10KΩの分圧抵抗器が挿入されます。 500mVでは ATT 出力電圧は 1.5mVに減衰された値となります。どのレンジにおいても ATT 通過後の扱う信号波形はいつも 2mV以下の信号を送出します。次段以降ではの増幅回路は安定した信号を増幅することになります。各レンジ゛ともフルスケール電圧は約1.5mV又は1..58mVを次段へ送出します。
増幅回路の周波数特性の調整に NFB用抵抗に並列接続小容量のコンデンサーを取り付けて 高域が多くのNFBがかかるようにし設計し 回路の安定化、バンドパス特性を調整しますが 今回は小容量のコンデンサーは挿入していません。

オペアンプで増幅度を調整するときには IC-B を例にしますと 出力端子からマイナス入力端子に接続されているNFB抵抗の値を大きくすれば利得が増加します。又利得を小さくする場合は抵抗値を少なくするとゲインが低下します。それ以外に マイナス入力端子と グランドに接続している抵抗値を大きくするとゲインは低下し 抵抗値を小さくするとゲインは増加しますので 2つの抵抗を調整することによりオペアンプの増幅度を変化調整することができます。

1段目の増幅回路は 1.5mVを150mVまでフラット増幅回路で増幅した場合の利得は40dBとなります。
2段目の増幅回路は 50mVを5Vまでフラット増幅回路で増幅した場合の利得は40dBとなります。 

この利得配分から総合利得は 80dBあれば表示用直流電流計を駆動することが可能であると判明しました。

実験の結果より最終回路基板

最終搭載基板

オペアンプは最終的には 2個のICを使った回路構成となりました。初段は NJM072D(IC-A,B) のデュアルICのうち片側で インピーダンス変換回路オペアンプを IC-A とします。各レンジにおいてオペアンプに入力される最大入力電圧は 500mV がインピーダンス変換後 ATT 10KΩでレンジ切り替えをしますので 500mVレンジを擬似的に作成して動作試験をしました。抵抗値は10KΩと33Ωを直列配線とし 中点から次段 IC-B の+入力端子に接続します。IC-A  での歪の発生しないレベルを調査しますと 入力電圧が 6V/rms までは実用になるのを確認しました。利得は 0dB であり増幅作用はありません。

正確な抵抗値を得るには汎用の抵抗を選別します。測定する測定器は DELICA 1100 インピーダンスブリッジを使い 1%誤差まで選別します。

DELICA IIMPEDANCE BRIDGE MODEL 1100

汎用部品のカーボン抵抗を インピーダンスブリッジで精密測定して希望の抵抗値を選別します。
今回500mV入力回路を模擬で作成し 実験しますので 10kΩと33Ωの抵抗を10本ほど準備します。実際に必要な精密抵抗の値は 9928.4Ω と 31.64Ω の精密抵抗が必要となります。
汎用抵抗は ±5%の抵抗からインピーダンスブリッジを使い選別します。インピーダンスブリッジでは1%誤差までの確度で測定が可能です。




10kΩ±5%の抵抗ですと 10500Ωから9500Ωの抵抗が 10kΩの表示をします。

33Ω±5%の抵抗ですと 34.65Ωから31.35Ωの抵抗が 33Ωの表示をしjます。

複数本の抵抗から精密測定をしますと 希望の数値 9928.4Ωは誤差内の数値になります。複数本から一番近い抵抗を使用します。同じく33Ωについても31.64Ωに一番近い抵抗を選別します。
以上の作業により より現実に近い動作環境を作成して実験をします。
昨今はデジタルマルチメーターの精度もよくなっております。0.5級以上の精度が確保されている機種もありますので デジタルマルチメーターで選別、精密測定でも可能です。

DELICA 1100 型 インピーダンスブリッジ測定器使い方については musenan03.blogspot.com を参照ください。

ATTで減衰された 500mV は 1.5mV まで減衰されており この信号を NJM072D(IC-B)で増幅されます。1.5mVが出力端子では120mVまで増幅されています。利得は約40dBほどあり考察と同様の利得配分となっています。

パターン配線面

IC-B で増幅された信号はレベル調整用半固定抵抗 20K(B)でレベル調整後 次段の IC NJM4580DD(IC-C.D) に送出されます。実験の段階で最初は安価な NJM4558DD を使用していましたが より大きい出力電力が得られる NJM4580DD に変更しました。

20KΩ(B)でメーター感度を調整します。IC-B で120mV まで増幅された信号は メーターがドライブできる電圧 約 2.7V まで増幅する IC-C のオペアンプ、プラス入力端子に接続します。IC-C のゲインとしては メーターフルスケール時の入力電圧は 約54mV となっており 2.7V までの増幅度は 約 35dB の利得で動作します。

IC-C て 3V  前後に増幅された信号は IC-D でインピーダンス変換した後 メータードライブ全波整流回路とモニター出力端子に送出します。モニター出力は IC-D の出力端子から出力ターミナル BNCコネクター間に 10KΩの抵抗を挿入してあります。又直流電流計をドライブするのに 点接触型ゲルマニューム・ダイオード 1N60 で全波整流で得られた直流電圧で 電流計を駆動します。

以上の実働実験から この回路を真空管式ミリバルの中に組み立てれば 校正作業の最終調整をしますと改修・改造作業は終了となります。

改修・改造後 ミリバル回路図


上図のような回路構成となります。現在販売されているミリバルの回路構成はもう少し複雑な回路となっています。

回路動作


ダイアル照明は豆電球から白色LEDに変更

デュアルオペアンプICを2個使った回路ですが 真空管のミリバルと同じ働きができます。測定機器である分圧抵抗器は 通常パーツ屋で購入できる抵抗値とは違い特殊な抵抗値となりますので 現有に使用されていました抵抗器を使用しました。

SW1 は 1.5mV レンジから 500mV レンジはスイッチ接点が X の位置となっており 交流負荷抵抗は 1MΩ となります。減衰されずに IC-A オペアンプのプラス入力端子に 入力されます。
又 Yの接点になるときは 1.5V レンジから 500V レンジの場合であり 1/1000 に減衰されます。その場合でも入力インピーダンスは 1MΩ となりますので レンジを変更しても 同じ入力抵抗値となります。
使用しました オペアンプは FET入力回路となっています。1MΩの負荷抵抗値に比較して非常にIC入力抵抗値が高く 回路動作としては 1MΩの抵抗(R1+R2) が入力抵抗値となります。増幅度が 0dB で増幅していません。

ミリバル内部構造

SW2は測定レンジ切り替えスイッチで 一番上のタップから 1.5mV(1.5V) 順に 5mV(5V)  15mV(15V)  50mV(50V)  150mV(150V)  500mV(500V)  の順番になっています。
IC-A は出力インピーダンスが低くなります。 ATT部のシリーズ抵抗値が10KΩと低い値ですが ホロワ回路で 出力インピーダンスが低く変換されていますので 分圧回路として正常に働きます。その後 IC-B で 約40dB増幅します。上記のファンクション切り替えスイッチはロータリースイッチで接点位置を切り替えます。

IC-B と IC-C の間にはレベル調整用の 半固定抵抗 20KΩ(B) が挿入されており メーター感度調整用のVRとなります。半固定抵抗以降の回路インピーダンスは低く 最初 NJM4558DDで設計していましたが より出力電力の大きな NJM4580DD に変更しました。殆んど同じバイポーラトランジスター入力回路ですので同等動作をします。


メーター駆動 両波整流回路基板とLED電源

VRで調整された信号は IC-C の+入力端子に接続され 約40dB弱のゲインで増幅します。その後 IC-D での ホロワ回路でインピーダンス変換されて モニター出力端子に信号を出力します。又同じ位置から D1,D2 のゲルマニュームダイオードで 両波整流後 直流電流計 200μA 感度の電流計を駆動させ 測定数値を表示します。
モニター出力端子は メーターフルスケールの時には 約2.7V/rms の信号を出力します。測定機器を接続した場合でも測定誤差を少なくするため 10KΩの抵抗を挿入してあります。オシロスコープ等の波形観測に使用できます。この出力端子ではどのレンジでも同じ波形値を出力するため モニター測定器のレンジを変更せずに 波形観測ができます。
この時点でのモニター出力のTHD(全高調波歪率)は1.2%を観測しました。モニターとして十分使用できる特性となっています。 


ファンクション切り替え 精密抵抗群


制御基板と各部への配線については基板に接続用端子を必要分を取り出してあります。又テストポイントも設置しています。信号ライン配線は同軸ケーブルもしくはシールド線を使用して配線をします。シャーシーへの接地は入力端子 BNCコネクター部で筐体と接地となります。オーディオアンプと同様に一点アースを基本とします。

電源回路

電源回路については±12Vの電源を回路基板に供給する必要があります。当初から搭載されていました真空管用電源トランスをそのまま流用しています。
高圧巻き線は今回使用しません。真空管ヒーターが直流点火用に巻かれている14V巻き線を流用します。規格は14V×2 のセンタータップ両波整流用でしたのでブリッジ整流をすることにより±12V定電圧回路が作成可能です。

制御基板と各部への配線状況


電源回路作成については ブログ ICを使ったステレオアンプの工作編を参照ください。
ダイアル表示板の照明については今回豆電球から球切れのない 白色LEDに変更しました。照明用電源は電源トランスの6.3V巻き線をブリッジ整流したあと直流で電流制限抵抗を取り付け 10mAで動作となるようにしました。


元の電源トランス流用

 入出力端子の変更

当初のミリバルは接続端子は M接栓ターミナルでしたが 小生の測定器群はほとんどBNCコネクター接続となっています。又ブランチ接続時はT型のBNCアダプターを使用して各機器を並列接続しますので BNCコネクターに変更しました。ライン出力端子は絶縁ブッシュを使用して筐体からは浮かした構造としました。バナナプラクで使用する場合は BNCコネクターに変換プラグを装着して使用します。
変換プラグについては 回路動作の完成写真を参考としてください。変換プラグ使用時のために接地端子は除去していません。

完成ミリバルの校正

常用使用のミリバルとの校正 LMV-87A  VT-106S


商用電源AC100V/60Hz交流電圧・オーディオジェネレーター1000Hzを使っての校正

YEW2013 60Hz 50Vを作成し校正作業

完成しましたミリバルを小生保有 他の測定機器を使用して校正を実施しました。結論から言いますと精度はあまりよくありません。50年近くなった真空管式ミリバル改造ですので 経時変化と増幅回路の違いによるリニアリティー誤差が発生したと思います。測定レンジにより最大±5%程度の誤差を確認しました。

HP 1202B オシロスコープ 波高値確認 50V 60Hz 20V/DIV
各レンジの0dBm基準値では1.5mV,15mvレンジ以外は0dBm位置をほぼ表示しており 大きな測定誤差はありません。1.5mV,15mvレンジは誘導雑音による誤差が発生していると思われます。
その他誤差の原因として 直流電流計に表示されている目盛が印刷された表示板であり手書き校正をしていない骨董品・量産品のメーターを使用しているのが原因かもしれません。
分圧精密抵抗器の誤差にも問題があると思われます。小生の場合は各測定機器は 取引証明用・校正証明を取得していない骨董品である YEW 0.5級 の精密測定機器やCRオシレーターとデジタルマルチメーターを使って 自己校正をしています。又交流波形については HP オシロスコープも作業前自己校正後 波高値から実効値に計算をして誤差を把握し 校正しました。
周波数特性についても検証しましたが 所有している複数台半導体回路のACミリボルトメーターと比較しましたが 通常測定しますオーディオ帯域内での誤差はほとんどありません。この測定器は精密測定には不向きですが 目安程度の測定用として使用することが判明しました。
ミリボルトメーターは電圧表示よりも デシベル表示での使用する場合が多く 誤差としては測定レンジにより最大 ±2dB程度の誤差を確認できました。レンジ切替に使用します精密抵抗は通常市販品と違い交換調整することができない特殊精密抵抗です。


最終的には 各レンジの精度、モニター出力波形の歪率がよくないため(フルスケール出力時 THD1.2%観測)増幅回路など利得配分、回路設計を今後見直しをしたいと思います。増幅段数の見直し、大きな利得では歪が多くなるため 増幅度の小さいアンプの段数を増やすのが得策かもしれません。今後の課題とします。

測定機器誤差とは 分圧精密抵抗の精度と電流計表示精度により 測定器全体の精度がほぼ確定します。

昨今のデジタル回路計は精度もよくなっており ACボルトレンジは 数ミリボルトから測定が可能ですが 測定リード線に誘導ノイズが飛び込み正確な測定ができません。デジタルマルチメーター(回路計)での 鳴き合わせをしましたがミリボルト測定においては正確な表示をしませんでした。
デジタルマルチメーターで微小交流電圧を測定するには 測定リードをノイズ対策をしないと使用することができないと思いました。
やはり 餅は餅屋に のことわざのように 使用目的に合った測定機器を選別使用することが肝心です。

上記校正作業の写真はは 0.5級精密測定器 YEW2013 ACボルトメーター(45Hz~65Hz)を使って48V,1A 容量の電源トランスで 約50数ボルト発生することができます。400Ω100Wタップつき 半固定抵抗でAC50Vを調整し出力します。並列にミリバル、デジタルマルチメーター、オシロスコープを並列接続し 校正します。 基準信号が60Hzですが 基準になる電圧が正確でないと校正はできません。オシロスコープで波高値を観測すると 20V/DIV レンジで141Vが観測されオシロスコープが狂っていないことも確認しています。ミリバルの校正ですので 1000Hzを基準に各周波数での測定誤差がないか CRオシレーターからの基準信号、デジタルマルチメーター、オシロスコープの波形を観測しながら校正し周波数特性も把握します。オシロではAC50Vの波高値(p-p)は 50(V)×2√2=141V となります。

デジタルマルチメーターは 交流電圧の誤差は 1V 以上ではほとんど狂いがなく 1V以下では誤差が大きくなっていました。交流電圧 mV の測定には不向きと判断しました。Hz測定モードは 周波数カウンターと校正しましたがほとんど誤差がありません。昨今のマルチメーターは色々測定ができますが精度は把握する必要があります。測定リードもノイズ対策が必要です。
上図写真のごとく 今回の校正はBNCコネクター、BNC,Tコネクター仕様とし 同軸ケーブルを使い並列接続で校正しました。校正基準電圧の電源インピーダンスが低いため 並列接続をしても電圧変動はありません。

ADVANTEST R6551 DEGITAL MULTIMETER


上図はアドバンテスト製デジタルマルチメーター R6551です。正確なmVの測定は困難ですが CR発振器 1000Hz 正弦波の 1Vrms もしくは 0.775Vrms の波形を計測校正します。シバソクAH979G 内蔵オーディオATT を使い 交流信号の基準電圧信号源として使用します。
信号出力には正確なアッテネーター(±0.3dB以内)を使い ミリバルの各レンジの精度を確認します。AH979G にはアナログ・ミリバルが内蔵されており比較も可能です。AH979G 連動歪率測定器では 正確なアッテネーターが付加されていますので 外付オーディオATTの必要はありませんが細かく微調整はできません。CR発振器出力波形は正弦波のみであり 方形波(単形波)は出力できません。R6551付属の測定リードは抜け止めロック機構があり ホット側の測定リードは誘導雑音から測定誤差を軽減するようにシールド線が使われています。しかし数⒑mV前後の測定では測定する回路インピーダンスにより誘導雑音などで正確な測定値表示しません。測定リードを短絡しても0mVとはなりません。測定リードを接続しない状態(上記)では ACレンジは0.665mVの残留電圧があります。このデジタルマルチメーターでのACボルト測定範囲は300mVから700V間でレンジが変化します。入力抵抗値は1MΩであり100Hzから50KHzが一番測定誤差が少なくなっています。分解能は1μVであり測定確度はカタログ値では0.28%と記載ですが 直流電圧測定時ではもう1桁測定確度はよくなります。

ミリバルなどの自己校正作業については 上記記載している測定器で 1000Hz の正弦波電圧で骨董品ですが手持ち各測定器を自己校正します。

ShibsSoku DISTORION METER / OSCILATOR     AH979G

基準となる正弦波は 連動歪率測定器 AH979G のオシレーターを使って自己校正します。この測定器の出力ターミナルは 600Ω となっており 解放電圧と600Ω負荷電圧ではキャリブレーション調整指示位置が異なります。ファンクションスイッチは OSC dBm 位置で メーター表示位置により基準電圧を調整します。
600ΩのATTを接続しない場合は600Ωを出力端子に負荷として接続します。E系列に600Ωがないため1.2KΩの汎用カーボン抵抗±5%1/4Wを選別し並列接続として使用します。精密測定すると601Ωとなっておりほとんど誤差がありません。600Ω負荷の時にはメーター・フルスケールに調整します。開放負荷時(100KΩ以上の負荷)には外付け600Ωの抵抗は接続しません。校正電圧は -6dBmの位置であり メーター表示スケールでは5の目盛に調整します。基準電圧の確認は出力端子に上記アドバンテスト製のマルチメーターR6551で 0dBm 0.775Vの10倍の電圧 7.75Vが出力されているかを確認します。その時の AH979G 出力ATTのポジションは +20dBm 位置です。デジタルマルチメーターは1V以上の測定であれば周辺の誘導ノイズによる誤差が少なく自己校正の基準交流電圧として使用できます。現実には大きな誤差は確認できません。マルチメーターと歪率計のCRジェネレーター出力電圧値との誤差はほとんどありません。骨董品の測定器ですが経年変化も少なく優秀です。道楽での使用環境ですので 高額出費となるメーカー校正証明は取得していません。

デジタルマルチメーターR6551の測定誤差・仕様等は アドバンテストのホームページをご確認願います。このマルチメーターは製造後15年以上経過しているためメーカー校正を受けることができません。取引証明の必要のない道楽での使用においては問題は少ないと思います。メーカー校正費用として同等のデジタルマルチメーターの場合は 3万円~4万円の校正費用出費となります。その場合校正証明書が添付されます。

考え方を変えれば 据え置き型のデジタルマルチメーターは高額ですが ハンディータイプのデジタルマルチメーターは校正費用と同等額で精度のよい国産測定器メーカー製・新品のデジタルマルチメーターが購入ができます。自己満足・道楽での使用の場合は 試験成績書、校正証明書の必要がありません。自己校正用標準機器として導入するのも一つの選択肢となります。

大手製造事業所ではISOの規定により取引証明となる測定機器類の多額校正費用が発生します。品質にかかわる問題であるからです。多くの企業では測定機器類はレンタル・リース契約で校正費用込みで運用する会社が多くなりました。中古市場ではリースアップ商品が流通しています。製造事業所・研究所では高額な測定機類は固定資産計上が減少し 測定器リース・レンタル経費計上処理しています。

安価なリースアップ・資産売却品の測定機器類を購入し 自己校正しながら道楽で活用しています。購入する額の目安として 固定資産価値から 10年以上経過すれば1/10です。一般的な表示であるメーカー販売価格ではなく 新品購入時・取得原価の1/10以下であれば妥当な金額と判断します。メーカー修理・校正ができない、取扱説明書がない、など リスクもあります。なんでも鑑定団・骨董品鑑定される方のように 中古品購入時には目利きが重要な要素となります。本当のガラクタ(ゴミ)も市場には流通しています。

TRIO RA-920 600Ω オーディオ・アッテネーター


AH979G出力端子に600Ωオーディオ・アッテネーターTRIO RA-920 接続することにより 精密な出力電圧の可変調整ができます。AH979Gは細かく出力電圧を調整する機能がありません。RA-920を接続する場合出力端子に外付け600Ω負荷抵抗は接続しません。測定する機器の負荷インピーダンスを確認しませんと正確な基準電圧とはなりません。出力負荷インピーダンスにより基準値が異なりますので測定器につながる周辺状況の把握が必要です。

この基準波形電圧でもって手持ちの各骨董品測定器群を随時自己校正・調整します。

電気校正器・電気標準器がほしいのですが 市場には数が少なく また測定器を校正する電気標準器の機器類は高額であり 個人での道楽では購入することができません。手持ちの各測定機器類は随時自己校正を行い道楽を継承しています。電気校正器の標準値がないため校正精度は不明ですが手持ち誤差の少ない機器を標準値として 自己校正しています。0.5級程度の精度は確保できていると思います。道楽。趣味の範囲です。上記記載の精度で測定しており 金銭的にも限度があるため 深追いはしていません。骨董品の測定機類ををいじくりますと 暇つぶしとなり結構楽しめます。

ジャンク品のミリバルは安価に流通しています。自己校正作業を実施しますと 道楽での使用には十分活用できると思います。自作真空管アンプ完成度の確認においては必要な測定器と思います。内部構造さえ理解すれば使用方法も理解ができます。同じような趣味で工作されている方については 自己所有・測定機類の自己校正作業は チャレンジしてください。諸先輩方の過去からの記載内容が多少とも理解できれば幸いです。


回路計自己校正作業内容については 別ブログ YEW3201回路計考察編
musenan04.blogspot.com  を参照してください。参考になると思います。


無線庵 仙人 の 独り言

今回お蔵入りしていました博物館行きの測定器の内部を解析し 近代化を図りましたが 測定機器の旧機種であればジャンク品などは粗大ごみ扱いです。 測定機器は内部を観察すると結構現在でも使用できるものも多々あります。格安なジャンク品測定器も内部構造さえ把握できれば物によっては ちょっと手を加えることにより 現代でも十分に活用できる物も存在します。

MEGURO MAK-6571A

お金さえあれば 諸先輩方のように高級な測定機器類を購入できますが 小遣いの乏しい小生は過去に先輩たちが作成した測定機器類を 現代でも使用できるように改修・校正します。じっくりと内部構造および動作状態を観察しますと回路構成が判明します。又測定機器をメーカー校正に出すと費用も高額出費となります。趣味の領域の道楽です。 自己満足の世界であり 自己校正作業をして楽しんでいます。懐古感により 古いものを改修し動作できるように心がけをしています。
オーディオ機器の音源としては古い物ばかりではなく 現在のデジタル機器も取り入れることにより道楽としての間口が広がります。

今回安価なICを使って修復をしましたが 誰でもできる作業とは思いません。自分の知識および能力を把握した上での道楽です。自分に合った道楽をお勧めいたします。多少とも知恵袋になればと思い記述しています。

現在の商品群であれば マイコン制御で 故障しますと買い換えたほうが 安価な商品が世の中にはびこっています。昨今の家電商品 修理・点検・調整のエンジニアにおいては ユニットのズボガエ がほとんどであり エンジニアではなく チェンジニア となっています。このような体制であれば 技術力の向上が望めません。専門的な知識が必要な開発・設計者と修理・調整エンジニアとの技術力の差は大きくなっています。又マニュアルがないと作業ができないエンジニアの数もも増加しています。応用が利きません""" 部品供給不能です。修理できません。買い換えてください。 """ でおしまい。自己責任であれば代用部品を作ればよいわけです。

メーカー責任を追及されると困る と言われることから ユーザーの立場を考えないメーカーがほとんどです。部品保有年限が規定され これを楯に買い替えを推奨します。費用の対価を天秤にかけての判断です。故障しなければ次の買い替え需用も発生しません。改造品およびメーカー指定外の部品などを使うと メーカーからは保障外 と判断され 自己責任でしか動作させることができません。プリント基板などは 本当に故障しているのは極一部の部品です。部品価格が5円の部品故障でもアッセンブリー交換です。 高額な修理代を請求されます。部品代金+人件費が一番高額(技術料)であり 諸経費+諸費用 が加算されると修理費用は馬鹿になりません。びっくりするほど高額となります。道楽であれば人件費は ただ同然 と判断できませんか。

廃棄されている商品の中には1つの代用部品で修復可能であるが 純正品でないため修復できず粗大ゴミ扱いで 廃棄されているのが現状です。小生も粗大ゴミ扱いかもしれません。

現在常用使用しています真空管アンプなどは 使用開始より40年ほど経過したものも使用しています。現在でも不自由なく使用することができます。家の中の家電商品では これだけ長期間使用できている商品は他にありません。長い年月の間には故障も発生していますが 自己責任で修理・調整を実施して実働しています。

上記の写真は現在常用使用しています骨董品 ACミリボルトメーター類です。SSVM(Solid State AC Volt Meters) とも呼ばれています。歪率計MAK-6571Aにも10dBステップの入力切替でACミリボルト電圧が測定できます。基準 dB は 1V 0dB が基準となっています。
下記は道楽を進めるに必要な骨董品の測定器群です。自己校正を実施しながら長期間愛用しています。 

道楽部屋 骨董品 測定器群

真空管全盛時代に多用された音声電力増幅用真空管の色々

 9MT 6BQ5,6BM8,6BM8,50BM8

一般家電用 コンポーネントステレオ装置がない時代 5球スーパーラシ゜オ、ポータブル電蓄、アンサンブルステレオ、白黒テレビ、カラーテレビなどに 多用された電力増幅5極管、ビーム管です。家庭用のテレビ、ラジオなどでは2~3Wの出力があれば実用になっていました。HI-FI装置のようにリニアリティーがよくないが 電力値が大きい5極管接続で多用されました。特に複合管の 6BM8 が多用されました。欧州名は ECL82 または PCL82 と呼ばれておりトランスレス装置に好まれて使用されていました。
日本国内においては欧州名はほとんど流通していませんが 8B8,16A8,32A8 などはヒーター電流、電圧違いはありますが同じ動作をする真空管です。

電源トランス付の商品からコストの安価なトランスレス商品が当時増加しました。外部接続機器がないため筐体内だけの充電部です。当時は安全な設計でした。裏蓋を開けて金属部に触れると感電事故は発生します。白黒テレビのときに音量調整つまみ、チャンネル切り替えつまみが抜けて金属シャフトをつかむと 感電した記憶があります。

7MT 30A5,30MP23,30M27,6AQ5,6AR5

特に 6BM8 同等管はあらゆる箇所に採用されていました。トランスレスヒーター管は 100mA,150mA,300mA,450mA.,600mA シリーズなどが製造されて違う型番を付けた真空管です。特に記憶がある中で ポータブル電蓄においては クリスタルカートリッジでサファイヤ針 STL-1 を使った電蓄で 直接商用電圧の100Vでヒーターを加熱する 50BM8 が多用されました。真空管2本でステレオ電蓄が製造され販売されていました。一番ローコストのステレオポータブル電蓄においては 50C5 を2本だけ使った商品もありました。電圧増幅管が省かれた ロープライス商品であり くまとり型モーター、アイドラー駆動で17cmターンテーブルで4スピード切り替え仕様のプレーヤーです。当時は製造コスト削減のため高額な電源トランスを使わない設計で 電源はシリコンダイオード1個の半波整流回路でした。カートリッジの接続金属部を触れると感電することがあり 現在の電気用品取締法では考えられない商品です。充電部は露出してはなりません。

某雑誌に商用電源AC100Vを直接絶縁せず トランスレス対称DCアンプなどといって堂々と発表されています。商用電源の極性を間違えるとグランドレベルが充電部となるため危険です。電源トランスを使用すると音が悪くなると言われています。リスニング時には 他の音響機器とはグランドレベルでつながって使用します。波及事故の怖さを詳しく説明されないお偉い先生も現実にはおられます。ひとつ間違えれば 最悪感電死亡事故、火災事故などを引き起こす原因ともなります。一般的には商用電源のエネルギーによる 怖さの詳細を理解されていない読者がまねて工作します。自己責任での道楽と思えばよいのでしょうか !!!!!!

自己責任での改修・改造・工作においても ほかに危害を与えない安全な設計、作業計画をしなければなりません。過去のデッドコピーである トランスレスアンプは現在においては安全性確保のため作成してはなりません。もしもまねて作成する場合は一対一の絶縁トランスを使用すべきです。
年寄りの僻み 愚痴をこぼしました。

ご安全に道楽を !!!!!!!

6BM8 は音声電力増幅だけではなく 白黒テレビ、カラーテレビにおいては垂直発振・出力管としても使用されていました。
真空管規格表によると 5極管に分類されますが 内部構造を見るとビーム形成翼がサプレッサーグリッドの位置にあり ビーム管構造ですが 5極管と明記されています。

特に複合管は 1本の真空管内に3極電圧増幅部と5極電力増幅部が組み込まれており真空管使用本数軽減に寄与しています。

9MT 6BM8系真空管のヒーター電圧と電流値

6BM8 6.3V 0.78A , 8B8 8V 0.6A , 10BM8 10V 0.45A , 16A8 16V 0.3A , 32A8 32V 0.15A , 50BM8 50V 0.1A となっておりますが ヒーター電圧の違いだけで動作は同じ真空管です。
5極管部 最大プレート電圧  600V 最大スクリーン電圧 300V プレート損失 5W スクリーングリッド損失が 1.8W であり 7MT 6AR5 と 12AX7 片ユニットの複合管に類似しています。製造当初の設計は垂直発振、垂直出力管として 設計されていますので カットオフ時の最大規格電圧が通常の出力管と違い高電圧が表示されています。しかし オーディオ出力管で使用する場合のプレート電圧は 200Vから280V程度が標準的な5極管接続動作例となります。
プレート電圧200Vのとき 出力は A級シングル増幅で3.5W  100Vで 1W出力が得られます。 トランスレス・ポータブル・ステレオ電蓄は商用100Vを半波整流して動作していましたから 出力電力は 1W強であったと推察できます。
6BM8 3極部の μ は 70 ほどであり 12AX7(μ 100) と 6AQ8(μ 57) の中間に位置すると思います。 プッシュプルアンプの場合は 6BM8 2本で 片チャンネルが構成できます。よく似た複合管で  6GW8(ECL86) は HI-FI 装置としても多数存在していました。今日あまり見かけません。昔 AM-50MHzのパナ6と呼ばれた真空管式トランシーバーAM変調器に使われた電力増幅真空管です。現在動作するか不明ですが所有しています。
現在でも 6BM8系 真空管は多数市場にあり 初心者入門用ステレオアンプキットなどでは数多くの商品が販売されています。真空管の雰囲気が味わいができる低価格の商品です。

もう少し高級なHI-FI装置ですと 6BQ5,7189A などの出力管を5極管接続でプッシュプル増幅アンプが各社当時主流のステレオアンプでした。6BQ5はAM送信機 TX-88D の変調器音声電力出力管として使用されていました。物を捨てられない症候群 いまだにほこりがかぶっていますが所有しています。

上記は7MT の真空管です。アンサンブルステレオでは トランスレス用真空管 30MP23,30MP27 が多用されており ラジオ、通信型受信機などでは 6V6 に類似した 6AQ5 ビーム管が多く使われておました。 自作並3ラジオ、自作5球スーパーラジオなどでは 6AR5 が数多く採用されております。市販トランスレス5球スーパーラジオなどでは 30A5,35C5 が電力増幅5極管です。

小生がラジオ少年時代に組み立てたのは小学生のころ NEC SD-46 を使ってアンテナコイルは単一乾電池の紙筒にエナメル線を巻き付けたゲルマニュームラジオが事の始まりです。その後はST管並三ラジオ・ST管5球スーパーラジオと進化しました。一番最初に組み立てたステレオアンプは 7189A 無帰還5極管接続シングルアンプでした。レコード再生はクリスタルカートリッジ仕様の4スピードプレーヤーでした。当時としては満足な音質でしたが 現在のシステムに比べると貧弱にな装置でした。おこずかいの少ない貧乏学生であり 現在も金欠病ですが 高級なステレオ装置などは 夢の世界でした。自宅では6球SP盤78回転電蓄ラジオから進化し 真空管式AMステレオ放送アンサンブルステレオの時代です。

ADC 220X IM型カートリッジ ・ クリスタル型ステレオカートリッジ

上図写真右は 50年ほど前に製造された アンサンブルステレオ・卓上電蓄に使用されていました未使用保管品のクリスタルカートリッジです。78回転SP盤も再生できるような構造で 180度針をひっくり返すとEP,LP盤のレコード演奏が可能でした。現在使用できるか出来ないかは不明です。
左側のカートリッジは ADC 220X IM型( induced magnet cartridge) ステレオカートリッジで40年ほど前に製造された普及品型カートリッジです。発電方式は他に MM型・MC型・MI型・VM型などがあります。 45/45ステレオカートリッジでの発電構造は種類により異なっています。普及品のステレオでは湿気に弱いロッシェル塩を使ったクリスタル型から 圧電素子を使ったセラミック型カートリッジが多く使われ 各社電気メーカーがセパレート型ステレオとして製造・販売されていました。1960年代の真空管式家具調アンサンブルステレオに変わり 1970年代からはソリッドステート・コンポーネント型ステレオが市場に現れています。小生の音響システムは 1970年代作成・真空管式ステレオは現在でも快適に動作しています。

ブログ記載内容については 過去からの経験・記憶を元に記述しています。誤解釈、誤記載も多々あると思います。ご勘弁ください。道楽を進めるにおいて 多少の参考となれば幸いと思い 博学な知識ですが記載しました。

by musenan sennin